「Netscape」誕生から20年--ウェブ普及の立役者を振り返る


「Netscape」誕生から20年--ウェブ普及の立役者を振り返る

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル 2014年10月20日 06時00分



 筆者はインターネットを1980年代から使っている。筆者にとってインターネットアプリケーションと言えば、「Archie」「Gopher」「Veronica」など、読者の皆さんの大半は聞いたことのないプログラムだった。そして、ウェブの登場とともに全てが変わった。

 筆者は、一般の読者向けにウェブについて書いた最初のライターであり、ウェブはまさに一般的なものとなった。筆者が言いたいのは、1993年の時点でウェブのユーザー数は数十万人だったはずだ、ということである。現在、Facebookだけで10億人を超えるユーザーがいる。

 初期の時代にウェブを使うのは本当に大変だった。インターネットを実際にサポートしているOSは「UNIX」だけだった。「Windows 3.1」を使ってウェブに接続したかったら、「Trumpet Winsock」と呼ばれるプログラムを使う必要があった。それを正しく設定するのは、本当に面倒な作業だった。

 インターネット接続を確保するだけでも、大変な頭痛の種だった。90年代初頭にはインターネットサービスプロバイダーはごくわずかしかなかった。そして接続できたとしても、「高速」なV.32bis、28.8Kbpsの接続が実現すれば幸運だった。そして「Lynx」や「WWW」といった初期のウェブブラウザも、Winsockほどは厄介なものではなかったとはいえ、決して簡単ではなかった。

 そして、1993年初頭にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にある米国立スーパーコンピュータ応用研究所が「Mosaic」をリリースした。これは、初のグラフィカルウェブブラウザとして人気になった。Mosaicは大きな前進だったものの、愛用しているのはテクノロジ愛好者だけというプログラムだった。

 しかし、Mosaicを開発したMarc Andreessen氏は、初の商用ウェブブラウザの1つである「Netscape」の開発に着手する。「Windows」「Mac」、そしてUNIXの「X Window System」で利用できるこのブラウザが全てを変えた。現在では、インターネット接続の設定はまだ簡単ではないが、それができる人なら誰でも、血や汗や涙を流すことなくウェブを使うことができる。
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この画面はわれわれの今の感覚では美しいとは言えないかもしれないが、Netscapeはウェブをテクノロジ愛好者だけではない一般大衆にもたらした初のブラウザとなった。

 Netscapeは単なるブラウザ以上の存在だった。現在われわれが知っているようなインターネットは、RSSフィードやダイナミックな「JavaScript」を使ったウェブページといったNetscapeのイノベーションから生まれた。Netscapeが1995年に上場するまでには、同社はスタートアップから10億ドル規模の企業へと、かつてない速度で成長していた。

 わずか数年ではあったが、Netscapeはインターネットを支配していた。しかしそれは長く続かなかった。

 インターネット人気に慌てたMicrosoftは、巻き返しを図った。Microsoftの初のブラウザである「Internet Explorer (IE) 1.0」は、「Spyglass Mosaic」をベースとしたもので、率直に言ってあまり良いものではなかった。Netscapeがウェブブラウザ市場シェアの80%を占めている状況にあって、Microsoftは何としてでも勝とうと決意した。

http://japan.zdnet.com/business-application/analysis/35055201/

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Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル 2014年10月20日 06時00分



 まずMicrosoftは、「Microsoft Plus! for Windows 95」と呼ばれる「Windows 95」のアドオンプログラムで、IEを無料化した。次に、新OSのWindows 95にIEをバンドルし始めた。米ZDNetのMary Jo Foley記者が当時伝えているように、MicrosoftはPCベンダーに対し、Windows 95とIEをそのベンダーのPC全てにインストールするよう強制した。ほかのPC向けOSのベンダーをつぶすことを目指していたわけではない。当時、OSの競争はそれほど激しくなかった。目標としていたのはNetscapeをつぶすことであり、同時にIEに関するSpyglassへの支払いを回避することだった。

 コンピュータの歴史の中ではあまり知られていないことだが、Spyglassは愚かにも、IEの販売数に応じて収入を得る契約を結んでいた。Microsoftは、IEは無料であり、OSの一部であるから、Spyglassへの支払い義務はないと主張した。

 NetscapeとSpyglassはどちらもMicrosoftを訴えて、両方とも勝訴した。しかし、いずれの勝利にも意味はなかった。皮肉にもSpyglassの株主は、テクノロジの歴史の中で最も愚かしい取引の1つによって金持ちになった。同社には価値のあるものがほとんど残っていなかったにもかかわらず、OpenTVはどういうわけか、テレビのセットトップデバイスには大きな市場があると思い込んだ。2000年に、である。そしてOpenTVは、価値のない会社を25億ドルで買収した。読者がOpenTVの名前を聞いたことがない理由は、これで分かるだろう。

 Netscapeはそれほど幸運ではなかった。

 米司法省はNetscapeに対するMicrosoftの行為が独占禁止法に違反する疑いがあるとして、Microsoftを調査することにした。最終的にNetscapeは「勝利」したが、その時には遅すぎた。Microsoftの行為が違法な独占に当たる、という決定をThomas Penfield Jackson判事が下した後の1999年には、NetscapeはMicrosoftに完全に打ち負かされていた。IEはウェブブラウザを支配しており、Netscapeは徐々に歴史上のものとなりつつあった。

 その後、Jackson判事の決定は骨抜きにされ、Microsoftは手ぬるい罰を受けるだけで難を逃れることになる。Netscapeはよろよろと歩き続けていたが、終わりは近づいていた。

 Netscapeはそのコードをオープンソース化しようとした。Netscapeのコードから「Firefox」が生まれることになるが、それはNetscapeのビジネスの助けにはならなかった。初期のNetscapeの社員であるJamie Zawinski氏は2000年に、「死につつあるプロジェクトに『オープンソース』という妖精の魔法の粉を振りかけたところで、全てが魔法のようにうまくいくということはない」と語っている。

 Netscapeは最終的にAOLに買収された。当時、人々はそれを大きな変化であり、Netscapeが勝利を収めるチャンスだと考えた。しかし、Netscapeは死のスパイラルに陥っていった。

 2008年2月1日、AOLはNetscapeのサポートを中止した。

 現在では、インターネットユーザーの大半はNetscapeについて聞いたことがない。それは残念なことだ。Netscapeは、そうした人々にウェブをもたらした、最も重要なただ1つのプログラムだったからだ。Netscape、君と出会えて良かった。今でも、君がいなくて寂しく思っている人たちがいる。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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