クローズアップ現代「川崎殺傷事件の衝撃 ~子どもの安全を守るために~」


テスト的にNHKサイト(クローズアップ現代)から部分コピーしたものです。

正しくはNHKオリジナルサイトにて閲覧ください。



2019年5月28日(火)
川崎殺傷事件の衝撃 ~子どもの安全を守るために~

川崎殺傷事件の衝撃 ~子どもの安全を守るために~

川崎市の路上で、スクールバスを待っていた小学生や大人が男に次々と包丁で刺された事件。男は両手に包丁を持って近づき、次々と襲う様子が目撃されている。登下校中の子どもが犠牲になる事件は過去にも相次いでいる。警察庁によると、13歳未満の子どもが通学路などで事件に巻き込まれたケースは去年全国で573件にのぼり、5月には新潟市で小学2年生の女の子が下校途中に殺害される事件も起きた。事件はどのようにしておきたのか、子どもの安全をどう守っていくか、最新情報を交え、専門家の知見を聞きながら深めていく。

出演者

  • 諸澤英道さん (常磐大学前理事長)
  • 宮田美恵子さん (日本こどもの安全教育総合研究所理事長)
  • NHK記者
  • 武田真一 (キャスター)
  • 栗原望 (アナウンサー)
  • 合原明子 (アナウンサー)

スクールバスを待つ小学生や大人に次々と…

カリタス学園 齋藤哲郎理事長
「本当に、このなんともいえない蛮行によって、落ち度のない子どもたちと、愛情深く子どもを育んできた保護者がこうした被害にあったことを、怒りのやり場もないぐらいの気持ちであり、痛恨の極みです。」

カリタス小学校 内藤貞子校長
「私は毎朝、学校の前で立っていますが、『おはよう』と声をかけたとき、(亡くなった)彼女は本当に笑顔いっぱいで『おはようございます』と返してくれるお子さんでした。本当に信じられません。今日も元気のいい挨拶が聞けるかなと思っていました。」

校内の防犯対策に万全を期してきたというこの学校。警備員による見回りや、保護者に対する名札携帯の徹底などを行ってきました。しかし、今回の事件は通学途中で起きました。事件当時、現場にいた教頭は、無言で襲いかかってきた容疑者になすすべもなかったといいます。
カリタス小学校 倭文覚教頭
「私は子どもたちの先頭におりまして、そこから6人ほどの児童をバスに乗せたとき、列の後方で子どもたちの叫び声が聞こえてきた。そのとき私の目の前に、犯人が両手に長い包丁らしき物を持って、無言で児童に刃物を振りながらバスの乗り場の方に走って行く姿を確認し、彼(容疑者)は何を話すでもなく叫び声をあげるでもなく、どなり散らしもせず、無言でした。だから子どもたちも気がつかない。大声をあげてやってきたら子どもたちも逃げることができたが、走りながら切りつけてくるやり方が、大勢の子どもたちを巻き添えにした。」

警察庁によると、通学路などで13歳未満の子どもが事件に巻き込まれたケースは、去年(2018年)、全国で573件に上っています。
平成13年に大阪教育大学附属池田小学校で、8人の児童が殺害された事件。これをきっかけに、学校の安全対策が進められてきました。その一方で、登下校中の安全をいかに守るかという課題が浮き彫りになってきているのです。
日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「決まった場所に、決まった時間に、子どもたちが十何人くる。狙う人にとっては狙いやすい。」

今回の事件は、なぜ起きたのか。そして、子どもたちの命を守るために私たちは何ができるのか。専門家とともに緊急検証していきます。

小学生や大人を次々と… 専門家が現場で注目したのは

事件を起こしたのは、川崎市に住む岩﨑隆一容疑者、51歳。この事件を検証するため、犯罪心理学が専門の桐生正幸さんが現場に向かいました。桐生さんが注目したのは、事件が起きた場所の特徴です。
合原
「人通りも多いですよね。そういう中で、こうした犯行が行われたというのは?」
東洋大学 教授 桐生正幸さん
「何気ない風景で車が通っていて、子どもたちがそこにいて、もう何か大きなことが起こるまでは、なかなか人はそれに気づかない。むしろそれが当たり前になってしまっている。ですから、日常生活の中で、このエリアというのは、ある意味、リスクの非常に高いエリアだったというふうに考えられるかもしれません。
実は人間の心理としまして、例えば人が多ければ多いほど、責任の分散というのが起きます。人が多ければ多いほど、無関心な状況を作ってしまうという心理的な状況があるんですね。」

現場は川崎市の住宅街の一角。駅からも近く、朝の時間帯は、通勤や通学で特に人通りの多い場所でした。さらに、近くには防犯カメラも設置されていました。
東洋大学 教授 桐生正幸さん
「通常、犯罪者というのは、リスク、つまり危険性と利益をてんびんにかけて犯行を行うわけですが、犯人は自分の姿が見られてもいいと。むしろ自分の犯行を達成するほうが、非常に自分にとっては有益だというふうに考えて、その時間帯を選んだというふうに考えていいんじゃないでしょうか。」

なぜ、人に見られてもいいと思ったのか。この点こそ事件の動機を読み解く鍵だと、桐生さんは指摘します。
近年起きた大量殺傷事件として桐生さんが挙げたのは、平成20年、秋葉原で起きた通り魔事件や、平成28年、相模原の障害者殺傷事件。いずれもあえて人目につく所で犯行に及ぶことで、社会に自分の主張を訴えるという意図があったといいます。
一方で、今回の事件は、犯行後、男はすぐに自分の首を刺して死亡。メッセージも見つかっていません。なぜ事件は起きたのか。現場を検証した桐生さんに、さらに聞きます。

小学生や大人を次々襲い… 専門家が読み解く事件

栗原
「現場には、犯罪心理学がご専門の桐生正幸さんにお越しいただいています。
まず私たちが立っているこの場所に、バス停があります。まさにここが現場なんですが、地元の方々に話を聞きますと、毎朝、子どもたちはこちらにきちんと列を成して並んでいたと。低学年の子どもたちが利用していたので、小さな子どもたちが並んでいる姿が目撃されていました。今回、保護者、そして子どもたちが犠牲になったわけですが、今回の犯行のねらいというのは、どんなものだったと見ていらっしゃいますか?」
東洋大学 教授 桐生正幸さん
「なんらかの動機を持って、この時間、この場所をまず選定して、ここに容疑者が入ってきた。たまたま居合わせた人が犠牲に遭ってしまったというふうな状況が考えられると思います。」
栗原
「そして子どもがいるスクールバスのバス停が狙われた、これはどういうことなんでしょうか?」
桐生正幸さん
「これは、いわゆる大量殺人の場合、できるかぎり短時間に多くの人を傷つけるという、『スプリー型』の犯行というのがあるんです。まさにそれを表すかのような状況ではないかと思っております。」

栗原
「この場所を狙っていたと?」
桐生正幸さん
「この場所を、まさに選択していたというふうに考えられると思います。」

栗原
「改めて、今回、この事件の特徴をどのように見てらっしゃいますか?」
桐生正幸さん
「実はこれまで大量殺人事件は、なんらかの自己アピール、社会に対するアピールといったものがあってそのような犯行があったんですが、どうも今回の事件は、そういったものがあまり見えてこない、なぜそのような犯行を行ったのかといったことが、やや分かりにくいという側面を持っている犯行ではないかと思います。そういった意味では、これまでになかったようなタイプの犯行が、また出てきてしまったのかという、ちょっと懸念を抱いております。」

専門家が読み解く事件 いったいなぜ?

ゲスト諸澤英道さん(常磐大学 元学長)
武田:スタジオでも議論を深めていきたいと思います。まずは犯罪学がご専門の諸澤英道さん。亡くなった方、そしてけがをした皆さんのことを思うと、胸が潰れるような思いがしますけれども、それだけではなくて、突然、事件に巻き込まれた子どもたちや居合わせた人たち、または家族の皆さんにとっても、今夜は本当に大きなショックの中で過ごすことになると思うんですね。皆さんのこと、どういうふうに思っていらっしゃいますか?
諸澤さん:私も犯罪に遭った被害者がどういうふうになっていくかということを30年、40年研究してきましたけれども、この事件を見て、今、この時間、夜の10時に、その現場にいたお子さんはもちろんだけれども、そのご家族の方や近くにいた通りかかった人も含めて、そういう方々が心の傷を負って、今どういう状態かということが、ものすごく気になります。
阪神・淡路大震災のとき、24年前に日本でもようやくPTSD(=心的外傷後ストレス障害)ということについての認識が広まってきて、見えている傷、血が出ていたり傷を負っていると誰にでも分かると。でも心の傷というのは、周りからは分からないんだというレベルから始まったと思うんですけれども。大事なのは、その事件直後、あるいはそれからしばらく、1か月、2か月ぐらいは続くわけですけれども、その状態の被害者、特に今回は子どもが多いわけですね。そういう人たちが、体が震えてしまってもう止まらない、それからものを飲めない、のどが渇いている、そしてこういう時間ですから、眠ることができないなどなど、夜中に失禁をする子どももいるでしょうし。そういう状態が今、多くの現場にいた人たち(の中)で起こっていると、そういうことについて思いを致さなければいけないし、そういう人たちがこれから1か月、2か月、3か月、場合によっては1年、2年、3年、どういうふうにしてそこから元の生活に戻っていくかということを、関係者がみんなで真剣に考えなければならない、そういう事件を私たちは今、突きつけられたような気がしますね。
武田:そしてスタジオ、社会部事件担当の渡邊デスクにも聞きます。ここまでの最新情報を聞きたいと思うんですけれども、まず亡くなったお2人について。
渡邊和明デスク(社会部):栗林華子さんは、カリタス小学校の6年生でした。先ほど、学校側が記者会見をしたんですけれども、その中で栗林さんの話を紹介され、その1つが先週、編入を希望している子どもを案内していた際、栗林さんが子どもの父親と母親に対して、外国語がたくさんできて、宿泊もたくさんできますと、この学校について笑顔で紹介していた、語っていたそうなんです。またこの件については、何もお願いはしていなかったんですけれども、たまたま休み時間に来て、来ている家族を見て、学校のいいところをいっぱい話してくれたそうです。
また小山智史さんですけども、子どもをカリタス学園に通わせていた保護者でした。今日(28日)は子どもを見送りに来ていて、事件に巻き込まれたと見ています。外務省の職員で、外務省に10人ほどいる、ミャンマー語の専門家の1人でした。平成25年には、ノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チーさんが来日した際に、担当官として京都に同行していたこともある方です。
武田:そして、子どもたちを刺した男についてですが。
渡邊デスク:この男についても、先ほど警察が、岩﨑容疑者と確認されたと発表しています。小学生と中学生のときの同級生の話によりますと、岩﨑容疑者は、子どものころから怒りやすい性格だった、学校でトラブルを起こすこともあったということなんです。同級生は、その男が中学校卒業したあとの進学とか、生活の状況は知らなかったとしていますけれども、今回、事件に関わったと聞いても、特に驚くことはなかったと話していました。
武田:なぜ男がこんな事件を起こしたのか、諸澤さんはどうお考えですか?
諸澤さん:今回の事件は、めったにない事件なんですけれども、多くの通り魔事件や無差別殺傷事件というのは、先ほどもちょっと解説がありましたけども、なんらかのメッセージがあるんですね。何かをアピールしたいために目立つようなことをやるというケースが多いんですけれども、今回の事件は実はそうではなくて、本人が自殺しているので分かるように、死ぬ気でやっているんですね。これは結局、自分の人生をここで終止符を打ちたいと。その時に多くの人を道連れにしていきたいという思いでやっていると思います。(大阪教育大学附属)池田小学校の宅間守も若干それに近いんですけれども、そういう事件と、そうではなくて生き残ってアピールするという事件をしっかり分けて考えなければいけないし、この種の事件に対する対策というのは、実は今はこの予備軍がたくさんいるんじゃないかと考えられています。現にこの報道の在り方によっては、なんらかの悪い刺激を与えることもある。特に、この種の事件というのは、3、4、5、6月にかなり集中しております。世の中が春になって、浮き足立ってきた時期に、実は世の中をはかなんでということですね。自分の人生に絶望感を持って、そして最後にこういう派手なことをやって、命を絶っていくという、そういう一握りの人たちがいる。それに対する対策というのは真剣に考えないといけないと思いますね。
武田:学校の外で子どもたちの安全をどう守っていけばいいのか。現場での専門家との検証から見えてきたものは?

子どもの安全どう守る? 専門家が現場を検証

どうすれば子どもたちの安全を守ることができるのか。地域や学校における子どもの安全について研究を続ける、宮田美恵子さんです。先ほど、事件現場の周辺を歩いて、検証を行いました。宮田さんが指摘したのは、朝の登校時に潜む意外な危険性でした。
日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「普段から平日は決まった場所に、決まった時間に、子どもが十何人くる。子どもを狙おうとすれば、朝のほうが狙いやすい。」

今回、被害に遭った子どもたちの多くは、駅からバス停まで決まったルートを歩いて通っていました。
栗原
「事件が発生した通りから1本、線路側の道に来たのですが、子どもたちの朝の動きは、いつもどのようなものなのでしょうか?」
不動産会社 男性
「低学年の1・2年生とみられるお子さんが、10人から15人のグループでここを歩いています。」

栗原
「こちらが駅ですよね。駅のほう(手前)から、あちら(奥)の方に子どもたちが歩いていく。」
取材をもとにした子どもたちの通学ルートです。登戸駅に数十人が集合。車の少ない線路沿いの道を進み、バス停へ向かっていました。
バスを待つ間は、いつも行列ができていたといいます。そして、子どもの人数が最も多くなる時間帯も毎朝、決まっていました。
栗原
「いつもバスは何時に停まるんですか?」
住民
「私がゴミを出す7時半頃には並んでいますよ。ずっと並んで待ってるんですよ。30人か40人が乗ってね、乗れない子は次のバスを待っている。」

規則正しい登校であればあるほど、子どもの行動が予測しやすく、下校時よりも危険性が高いというのです。
日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「下校時は、一般の小学校はバラバラと学年ごとに下校になりますから、まとまっているかと言うとバラバラ帰るけれども、朝は決まった時間帯に、決まった道を通って子どもたちが移動しますから。」

実は、過去にも似た事件がありました。平成22年、茨城県で、学校に向かうバスで起きた事件。車内に男が乗り込み、刃物を振り回し、中学生や高校生ら14人がけがを負いました。この時も、時間は7時40分。場所も通学用のバス停と、今回と似通った条件で子どもたちが狙われました。

見守りを強化していたのに… 安全をどう守る?

登下校時の子どもたちの見守りは、どのように行われていたのか。事件が起きた川崎市では、いち早く防犯アプリを導入するなど、対策に力を入れていました。警察に届いた不審者情報などを保護者や学校関係者などに配信する仕組みです。ただ、今回は突然の事件を察知することはできず、危険を知らせる情報は配信されませんでした。
宮田さんは、ITツールの有効性は認めつつも、事前の予測には限界があると指摘します。
日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「事後のニュースになるので、これを見て保護者が駆けつけても、それが残念ながら事後になっている。」

前触れもなく起きる事件に対し、全国では人の目による直接の見守りも重視されてきました。
去年5月、新潟市の小学生が下校途中に殺害された事件。これを機に、国の指導の下、各地で通学路の安全点検を強化する動きが広がりました。
川崎市でも、警察のOBなどを中心としたボランティア、スクールガードリーダーを配置していました。事件が起きた地区でスクールガードリーダーを務める、秋田谷隆二さんです。
スクールガードリーダー 秋田谷隆二さん
「今回の事件もそうだし、車が突っ込んだり、小さい子を巻き添えにしすぎ。気持ちのもって行き場がない。」

スクールガードリーダーは、学校の防犯態勢を指導するほか、登下校中の見守りも行うボランティアです。国の方針では、小学校5校に1人の割合で配置することが目標とされています。ところが秋田谷さんは、1人で7校を担当。手帳にはぎっしりと巡回エリアが書き込まれていました。
秋田谷さんが担当するのは、川崎市内の7つの公立学校。事件が起きたバス停も、巡回エリアの1つでした。しかし、今月中旬、担当している別の場所で不審者情報があり、秋田谷さんは、そこを重点的に巡回していました。
スクールガードリーダー 秋田谷隆二さん
「全域をパトロールすれば一番いいのだが、そういう時間的な制限もあるし、事案の発生の多いところを選んでというか、そういう場所になる、どうしても。」

栗原
「こういう事件が起きたことについては?」
秋田谷隆二さん
「残念だ、すごく悲しい。力不足を感じる。」

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「一般の方々には、もうこれ以上頼んでも、もう限界、無理です。いろんなことを頼み過ぎています、現在でも。ですから、ここからは防犯という専門性を持った、例えば警察官という制服を着た方が具体的に姿を見せてくれるだけでも、抑止力になりますね。これをやったら特効薬ということはありませんけれども、犯罪を起こさせないという観点で、できることはいくつかあると思うんですね。」

事件を受け、小学校は会見で今後の対策を強化すると語りました。
カリタス小学校 内藤貞子校長
「今後、登下校の教員による見守り態勢を強化いたします。また警備員も増員して強化をしていきます。」

対策を重ねても起きてしまう事件。どう子どもを守っていけばいいのか。
日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「今すぐできることがあります。」

その方法とは?スタジオで詳しく解説します。

子どもの安全をどう守る?いま何をすべき

ゲスト宮田美恵子さん(NPO日本こどもの安全教育総合研究所 理事長)
武田:現場で、本当にこういった事件に対処することの難しさもお感じになったということですけれども、まだできることがあると?
宮田さん:本当に今回の事件は、対策には難しさがあるというふうに思います。しかし、その中でできることを少しずつやはり進めていくということが必要ですね。
武田:そのポイントがこちらです。まず「朝も巡回を」。夕方だけではなくという意味ですね?
宮田さん:これまでやはり子どもたちが外で被害に遭うというと、下校時、例えば広島、奈良、栃木など、またこの前の新潟の事件もそうですが、下校時に多く起こっていましたので、やはり下校時間帯を中心に、パトロール活動などを地域で行ってきました。ですけれども、やはり朝の時間というのは、時間帯も経路も一緒なので、狙いやすさというのがあります。ですから、やはり朝にも、今あるパトロールを少しシフトしていくようなことができればいいなというふうに思います。
武田:そして「“見せる防犯”へ」というのはどういうことでしょうか?
宮田さん:それは今、地域の方々、一般市民の方々が本当に子どもに寄り添って見守りということをしてくださっています。これからはそれにプラスする形で、防犯の専門性を持っている警察官などが制服姿でもっと防犯ということを見せていくということができると、もっといいなというふうに思います。
武田:そして「抑止力のある時間・場所で子どもたちを行動させる」ということですが?
宮田さん:これは、朝の時間帯には見守り活動ですとか、パトロールなどの大人の対策が今あります。そこに子どもたちが、その時間に行くということで、安全が担保されますから、例えば寝坊して遅れてしまうと、そこに乗り遅れてしまいますので、家庭でもその時間にちゃんと登校できるように支援してほしい、そういうことです。
武田:子どもたちにしっかりと、自分の身を守れる時間帯や場所を教えるということですね。諸澤さんは、今回のような事件、どういうふうに防げばいいというふうにお考えですか?
諸澤さん:今、宮田さんがおっしゃったように、90何%のほとんどの事件では、大人たちの目が行き届いていれば、犯人がそれを避けて、別な場所へ移動してしまうということがある。そういう意味では、非常に防犯効果があるんですけれども、今回の事件は実はそうではなくて、もう堂々と白昼、多くの人の目の前で行っている。こういう一握りの犯罪者に対してどう対処するかというのは、これはちょっと目だけではなくて、もっと組織的に動かなければいけないし、万一、危険な状態になったら、体を張ってそれを守るような、そういう例えばセキュリティー関係の会社もいろいろありますけれども、そういう人たちを雇って、しっかり守ってもらうというようなこともやらなければいけないと思うんですね。
武田:宮田さん、今回はその地域の人たちが見守ってはいた、しかしその実力を行使できるような立場ではなかったということですよね。
宮田さん:やはり地域の方々は、本当に一般市民として子どもに寄り添ってくれるということが1つの大きな役割ですので、そういう中で子どもの安全というと「地域ぐるみ」という言葉で、ある意味まとめてきました。しかし、地域ぐるみという言葉は非常にあいまいなんです。ですので、もっと多くの人たちが、見守りしている人たちだけではなくて、当事者意識を持って、もっとみんなができることを、もっとやっていくということが大事です。
それから今回は、地域ぐるみというと、公立の子どもたちを見守るという視点になっていますけれども、今回は私立でもあったということで、地域の中で見守り方が縦割りになっている気がします。やはりそういう意味でも、地域ぐるみという言葉をむしろそっちに使って、この地域にある子どもたちをみんなで守る、そういう意味で使っていきたいと思います。
武田:今回も現場には、保護者の方がいらっしゃいました。
諸澤さん:そういう態勢は取られたけれども、事件は起きてしまう。
武田:保護者としてはどうしたらいいのかと思いますよね。
諸澤さん:これは国の問題であり、社会の問題であると思うんですね。この種の事件に対する対策というのは、個人レベルで対応はとてもできるわけじゃなくて、国はもっと真剣に議論していかなければいけないし、システムを作っていく、非常に安全性の高い社会を作っていくということをもっと真剣に考え、議論していかなければいけないなと思っています。
武田:先ほど宮田さんが、地域ぐるみという言葉では済まされないとおっしゃいましたが、より具体的に、こういった事件を、不測の事態を防ぐための仕組みを議論するということですね。
本当に保護者としては、子どもの命を守れないということに関してはつらいことだと思います。しっかり考えていかなければならないと思います。

クローズアップ現代「泥沼の米中“貿易戦争” ~ファーウェイショックの行方~」


テスト的にNHKサイト(クローズアップ現代)から部分コピーしたものです。

正しくはNHKオリジナルサイトにて閲覧ください。
 




2019年5月23日(木)
泥沼の米中“貿易戦争” ~ファーウェイショックの行方~

泥沼の米中“貿易戦争” ~ファーウェイショックの行方~

6年2か月ぶりに景気動向指数が「悪化」へ引き下げられた日本。米中の貿易摩擦が深刻化する中、中国経済の減速によって、日本企業の生産が落ち込むなど、影響が広がっている。既に生産拠点を中国から移そうと対策を進める企業も現れ、米中の対立が長期化することに備える動きが出始めている。さらに、ここに来て、トランプ政権は、中国の通信機器大手・ファーウェイに対しても厳しい姿勢を強めており、世界や日本の企業へのさらなる影響が見込まれる。果たして、米中の激しい対立はいつまで続くのか?“貿易戦争”の最前線を追い、私たち日本や世界にどのような影響があるのかを考える。

出演者

  • 吉崎達彦さん (双日総合研究所 チーフエコノミスト)
  • 小柴満信さん (経済同友会 副代表幹事)
  • 武田真一 (キャスター)

“狙い撃ち”の波紋 影響は日本に…世界に…

武田:ファーウェイショックが世界を揺るがしています。中国を代表する企業への制裁にまで踏み切ったトランプ大統領。エスカレートする米中の対立に打開の道はあるのでしょうか。
アメリカ トランプ大統領
「中国にとっては大きな代償だ。彼らはハッピーではないが、それでいいんだ。すべてうまくいく。」

中国外務省 報道官
「さらに圧力を強めるなら、どこまでもつきあう。」

一昨日(21日)東京で行われた、ファーウェイの新型スマートフォンの発表会です。
詰めかけた100人以上の報道陣が注目したのは、ファーウェイ幹部のアメリカ政府に対する発言でした。
ファーウェイ日本法人 製造部門トップ 呉波氏
「ファーウェイは、アメリカ側の決定に反対する。世界のサプライチューンの信頼と協業が分断される。」

ファーウェイが反発しているのが、先週、トランプ大統領が下した決断です。ファーウェイの製品によって機密情報が奪われると警戒するアメリカ。国内の企業に対し、政府の許可なく取り引きすることを禁止すると発表したのです。
ファーウェイは、スマートフォンの出荷台数で世界第2位。通信設備では世界トップのシェアを持つ通信機器メーカーです。中国・広東省にある研究開発拠点は、社員が専用の電車で移動するほど広大。全従業員18万人のうち、半分近い8万人が研究開発に従事しています。
アメリカの一方的な決定は、ファーウェイと関わる世界の企業にまで影響を及ぼしています。ファーウェイの取り引き先は、パナソニックや三菱電機など、日本だけでも100社以上。世界中で1万3,000社近くに上るとされています。グーグルが、ファーウェイのスマートフォンへの基本ソフトの提供を取りやめると報道され、波紋が広がっています。
KDDIとソフトバンクは昨日(22日)ファーウェイの新機種の発売を延期すると発表しました。
世界に広く普及してきた、ファーウェイ製品。アメリカも例外ではありません。アメリカ西部で、インターネットや電話などの通信サービスを提供する会社です。
アメリカ 通信会社CEO
「この種のケーブルシステムを作っているのはファーウェイだけです。他社製品に交換するためには、ネットワーク全体の設計を見直さなければなりません。」

この会社では、ファーウェイとの取り引き禁止で、設備全体の見直しを迫られています。
アメリカ 通信会社CEO
「たとえば(ファーウェイの)装置を交換することになった場合、設置にどのくらいの期間がかかると思う?」

社員
「交換だけで1年から1年半は必要です。」
「無理ですよ。未知の領域です。」

アメリカ 通信会社CEO
「通信網からファーウェイを撤去することになれば、会社の経営に多大な影響が出ます。」

なぜアメリカは、中国を代表する企業を狙い撃ちする実力行使に踏み切ったのか。その背景には、中国の台頭がアメリカの覇権を脅かしているという強い危機感があります。
アメリカ トランプ大統領
「これまでアメリカは最も大切な産業と技術を中国に不当に奪われてきた。」

中国は、2025年までに、情報通信やAI・人工知能などの先端技術で世界トップ水準を目指す国家戦略を掲げています。
ファーウェイが世界をリードする次世代通信5Gは、その中核を担っているのです。
トランプ政権で安全保障政策を担当していた、マクマスター前大統領補佐官です。中国の国家戦略は、将来的にアメリカの軍事的な優位も揺るがしかねないと懸念しています。
アメリカ マクマスター前大統領補佐官
「中国は民間の先端技術を軍事に融合する戦略を推し進めています。中国共産党の政策は、アメリカの国益と繁栄を脅かすものです。中国の政策に対抗しなければならないのです。」

日本企業の経営者は、ファーウェイショックをどう捉えているのでしょうか。

広がる影響 いま何が起きているのか

ゲスト 小柴満信さん(経済同友会 副代表幹事)
ゲスト 吉崎達彦さん(双日総合研究所 チーフエコノミスト)
武田:グローバルにビジネスを展開されている小柴さん。半導体製造用の素材を作られているということですが、今回のファーウェイショックをどうご覧になっていますか?
小柴さん:我々がグローバルにビジネスを展開する場合、昔は市場の機会を見て、検討しながらやっていましたが、2000年以降になって、Gゼロという世界の中で地政学=ジオポリティクスをいろいろ考えるようになって、たぶん業種によっても違うと思うんですけれども、我々のような設備産業の場合には、長い間ビジネスをしなければいけないのでサスティナビリティは非常に重要になってきます。そこに加えて先端技術は、我々の世の中の進歩にも役立つし、生活もよくする。ただ一方で、それが武器としても役立つという、先端技術の二面性によって、世界の勢力地図が変わってくると。そういった状況を、我々は事業展開する中で考えていかなければいけないと思い知らされる、一つの象徴的な事例じゃないかと思います。
武田:一方、アメリカの政治・経済に詳しい吉崎さんは、ファーウェイが、いわゆる5Gの分野で世界をリードしている現状を、「アメリカにとっての第2の“スプートニク・ショック”だ」と指摘されています。
「スプートニク」とは、旧ソビエトの人工衛星ですけれども、これはどういうことでしょうか?
吉崎さん:ちょっと古い話なんですが、昔、アメリカとソ連が対立していた時代に、アメリカは当然、宇宙開発では自分が一番進んでいると思っていた。そしたら、人工衛星をソ連のほうが早く打ち上げたと。そのことに大変ショックを受けて、そこから一念発起して、アポロ計画を作って、月面着陸へというストーリーがあるわけですけれども、今回、5Gもまさしくそうで、気が付いたら中国のほうが進んでいるじゃないかと。そのことにちょっと焦りを感じているように思います。
武田:アメリカにとっては大きなショックなんですね。

エスカレートする応酬 第4弾も

武田:互いに関税を引き上げる応酬を続けてきた米中両国ですけれども、トランプ大統領は第4段の関税引き上げについて、早ければ来月(6月)の下旬にも実施できるように手続きを始めています。
この第4弾は、これまでとはレベルが違います。ほぼ全ての中国からの輸入品に対して関税をかけるというものだからです。これまでの応酬で、すでに影響が広がる中で、この第4弾を避ける道はあるんでしょうか。

エスカレートする応酬 対立は解消するか?

世界の工場と呼ばれてきた中国。製造業が集中する深センで、今、異変が起きています。一昨日、深センのメーカーと取り引きがある日本の商社マンが現地を訪れました。
自動車やスマートフォン向けの工作機械を生産している、この工場。毎年1割ほど売り上げを伸ばしてきましたが、今年(2019年)に入って受注の伸びが止まりました。
工作機器メーカー 社長
「この先どれだけ注文があるかわかりません。」

貿易摩擦が激しさを増す中、今後、事業はどうなるのか。商社マンは社長に尋ねました。
工作機器メーカー 社長
「今まだどの程度かわからないで、そういう事が設備が止まるとか、半年後スタートとか、いろいろ止まってる仕事が多いですね。」

航進エンジニアリング 大石忠秀さん
「仕事が減ったのかもしれないし、そこら辺の把握はまだ彼らがしている最中だと思います。制裁とかいろいろな形があると思うんですけど、それは全く僕らは読めないというのが怖いじゃないですか。」

貿易摩擦による影響は中国だけにとどまらないと、専門家は指摘します。
日本総合研究所 上席主任研究員 三浦有史さん
「メイド・イン・チャイナ、実際はその製品Aには中国だけでなく、台湾、韓国、ASEAN、日本から調達された部品が組み込まれて。」

世界の企業は、中国を中心としたサプライチェーンでつながっています。アジア各地で作られた部品は中国で組み立てられ、アメリカへ輸出されています。このため、関税の引き上げで輸出が落ち込めば、アジアを中心とするサプライチェーン全体が打撃を受けるのです。今後、ほぼ全ての輸出品に関税がかかると、影響はどこまで広がるのか、専門家が独自に試算しました。影響は中国だけでなく、多くの部品を供給する台湾や韓国、マレーシア、そして日本にも及ぶことが明らかになりました。
日本総合研究所 上席主任研究員 三浦有史さん
「中国を最終的な組み立て拠点としてアメリカに輸出するという従来のグローバルチェーン。このグローバルなバリューチェーンに乗っている企業に対して(影響が)集中的に現れる。そういう電気、電子産業において、部品を供給する役割を担っている企業は大変大きな影響を受けることになる。」

一方、アメリカでも深刻な影響が出始めています。中国への主要な輸出品だった大豆。中国が報復の関税をかけたことで、廃業する農家が増えているというのです。
大豆農家 クリストファー・ギブスさん
「大豆の価格は3割下落しています。」

これまでトランプ大統領を支持してきた、この男性は、自国の産業が打撃を受けても強硬姿勢を貫く大統領に怒りの声を上げています。
大豆農家 クリストファー・ギブスさん
「不安な気持ちでいっぱいです。今はもうトランプ大統領を支持していません。」

さらに影響は、消費者にも及びかねません。トランプ大統領が、中国からのほぼ全ての輸入品に対して、関税を引き上げる可能性があるのです。中国でスニーカーなどを製造するアメリカの170の企業は、関税が引き上げられれば、大幅な値上げを余儀なくされるとして、トランプ大統領に連名で抗議の書簡を送りました。
アメリカの調査会社のエコノミスト、ローラ・ボフマン氏。トランプ大統領が関税を引き上げることで、アメリカ経済がどれだけの打撃を受けるのか試算しました。今後、関税がほぼ全ての輸入品にかけられると、4人家族の世帯では、年間の支出がおよそ25万円増加します。仕事を失う人も215万人に上るというのです。
調査会社エコノミスト ローラ・ボフマン氏
「多くの企業が新たな社員の採用を見合わせています。関税の引き上げから1年が経ち、打つ手がなくなっているのが現状です。この関税によってアメリカ経済は徐々にむしばまれていくでしょう。」

大きな影響が出る、第4弾の関税引き上げ。なぜアメリカは、そこに踏み込もうとしているのか。先月(4月)まで、中国との貿易交渉で中心的な役割を担ってきた、クリート・ウィレムズ氏です。交渉の中でアメリカは、中国がアメリカの先端技術を不当に入手しないよう、法改正まで迫ったといいます。
アメリカ ウィレムズ前大統領副補佐官
「かつての中国との協定はおおざっぱで具体的ではありませんでした。その結果、中国は協定に従ってこなかったのです。ですから今回のアメリカの目標は、強制力のある明確な約束をとりつけることです。アメリカは中国が構造改革をおこなうよう、力を入れているのです。」

一方の中国にも譲れない一線があります。2025年までに、製造業を世界トップ水準に育成する国家戦略を掲げる中国。それを実現するカギは、政府が国有企業に支給する補助金です。アメリカからは「過剰な補助金が公正な競争をゆがめている」と是正を求められています。
「こんにちは。国家健康医療ビッグデータセンターにようこそ。」
中国の市政府から、およそ1,000億円の支援を受けている医療研究の企業です。最先端の遺伝子検査機器を導入し、急成長を遂げています。
政府からのばく大な支援によって、世界の企業との競争で有利な立場に立っているのです。
広報担当者
「私たちは国有企業ですから、政府の投資によって成り立っているといっても過言ではありません。投資は今後も増えるでしょう。」

国有企業への補助金などの優遇策は、年間数兆円に上ると見られています。アメリカによる関税の引き上げが続き、補助金まで廃止させられれば、国有企業は大きなダメージを受けると専門家は見ています。
天則経済研究所 盛洪所長
「長期的に見ると(関税は)中国の経済発展にマイナスの影響を与えるかもしれません。政府による優遇策の廃止は、国有企業にとって当然受け入れられないのです。」

アメリカと中国の厳しい対立。どう決着するのでしょうか。

対立は解消するか?米中の思惑

武田:トランプ大統領と習主席は決着させることはできますか?
吉崎さん:第4弾の関税は、要するに残り全部ですから、3,000億ドルぐらいと、すごい規模なんです。ただ、これを実行するのは1か月後と言われていて、ちょうどその時期には、大阪でG20の首脳会議があって、そこに米中首脳会談が重なるわけなんです。トランプ大統領としては、関税の引き上げをテコにして、新たな譲歩を引き出そうという、いつもの作戦だと思います。
武田:そこでは何らかの決着を見る可能性もありますか?
吉崎さん:中国側が大人の返事をする可能性は、私は十分あると思います。
武田:ただ、構造的な改革も求めているわけですから非常に根深いですね。
吉崎さん:そうなんです。ですから、トランプ政権の側にもいろんな意見があって、トランプ大統領はどっちかというと「赤字が問題だ」と言っている。ところが、いろんな人がいて、ライトハイザー通商代表は「とにかく、この構造的な問題を直さなければいけない」と言っている。それから、先ほどの先端技術の問題じゃないですけれど、「安全保障がより問題だ」と言っている人がいる。
全体として、中国に対して、ガツンと出なければいけないという意識はあるんだけれど、じゃあ、戦略がちゃんとアメリカの中にあるかというと、そこはちょっとおぼつかない感じがしますね。
武田:とすると、これは相当長引くことが考えられますかね。
吉崎さん:通商交渉に関して言えば、どこかで折り合いをつけることはできるかもしれませんが、こういう米中の対立は、10年、20年かかると考えておく必要があると思います。
武田:来年(2020年)アメリカ大統領選挙を迎えます。貿易戦争の影響が自らの支持層にも広がっている中で、トランプ大統領はこのまま対中強硬路線を続けていくことができるんでしょうか?
吉崎さん:大豆農家の方が大変怒っていましたけれども、トランプ大統領という方は、機を見るに敏な方なので、そういうところを見ながら上手に立場を変えていくんじゃないかなと思います。

対立は解消するか?日本企業はどう備える

武田:アメリカは中国に対して、経済や産業の商習慣や仕組みそのものを改革するよう求めています。小柴さんも経営者として、こうした改革の必然性は感じますか?
小柴さん:今、一番問題になっている技術の強制移転とか、知的財産の保護とか、こういうものに関しては、私のパートナーや友人から聞くと「競争は歓迎するけれども、やはりフェアであろうよ」と。そういう意味でいうと、フェアな競争をする環境を作ることに関しては、結構支持が強いですね。
武田:技術移転が問題になっていますけれども、中国にどういうことを求めますか?
小柴さん:例えば、我々が中国で工場を建てようとすると、そこで作る製品の内容を全て開示しないと、なかなか製造許可が取れないとか。
武田:それが企業秘密であったりするのに開示しろと。
小柴さん:そうですね。
武田:そこは、トランプ大統領の言っていることも、ある種、一理あるとお感じになるんですね。
この米中対立は、10年、20年続くかもしれないという指摘もありましたが、こういった状況をどう捉えて、どう備えますか?
小柴さん:やはり政治とビジネスは切り離して考えるべきであって、今、政治は、Gゼロの世界から、先端技術の二面性に明らかにレジームチェンジがあるわけです。
武田:レジームチェンジ?
小柴さん:世の中の枠組みが変わってくる中で最適解を探していくのだと思うんですけれども、現実的には、ビジネスを地域的にも事業領域においても多様化して、かつ、そういう意味で言うと、ポートフォリオで事業をくみ上げていくのが、一番現実的な解じゃないかと思います。
武田:いろんなところにリスクを分散させるということですね。
米中対立の長期化を見据えた動きも起きています。
今週、日本の精密機器メーカーの社員があるプロジェクトを任され、ベトナムの工場に向かっていました。
オプテックス・エムエフジー 林出幸治さん
「工場もどんどんできていますね。いまから行くノイバイ工業団地も、新しい工場がいくつもできていますね。」

「ここが先週から通常量産を開始したラインになります。」
これまで、自動ドアなどのセンサーを中国で製造し、アメリカに輸出してきた、このメーカー。ベトナムでの生産を拡大することにしたのです。協力企業の生産ラインを増設し、作業員の教育にも力を入れています。背景にあるのは、関税の相次ぐ引き上げ。上乗せ幅は、去年(2017年)9月に10%、今年5月には25%になりました。この負担を回避するため、中国中心の生産比率を見直し、この1年でベトナムの割合を大きく引き上げる計画です。
オプテックス 上村透社長
「いまの試算でいくと、われわれが何も対策をしなければ、アメリカの利益の半分以上が、税金、関税で飛んでいくくらい大きな影響を受けます。やっぱり(中国から)分散をしておかないと、非常にリスクが高いということで、ベトナムへの比率をこの1年で一気に上げたいと考えています。」

対立は解消するか?日本はどうする

武田:小柴さんの会社は、どちらに分散させているんですか?
小柴さん:我々は、特に設備産業である合成ゴムの製造設備は、タイを選択しました。
武田:これまでも中国以外に拠点を持つ「チャイナプラスワン」という考え方はあったと思うんですけれども、そのプラスワンの部分だけで、うまくシフトできるのか、中国を中心としたサプライチェーンに代わる仕組みは作ることができますか?
小柴さん:その製品の性質にもよると思うんですけれども、中国は市場としては非常に重要な所なので、マーケティングとか販売とかは強化はしていますけれど、エレクトロニクスの場合は、非常に中国が深く組み込まれているので、時間はかかるけれども、新しい組み直しは、私は可能だと思っています。
武田:吉崎さんはどのようにお感じになりますか?
吉崎さん:アメリカと中国がこんなに激しく競り合う時代では、やっぱり規模感を正しく身につけなくてはいけなくて、今、GDPでいうと、アメリカが20兆ドル、中国が12兆ドル、日本で5兆ドルですから、4倍と2.5倍の相手が競っていると思わなければいけない。そういう中にあって、相対的な弱者であることを自覚しつつ、その中で、いかに選択肢を増やして柔軟にやっていくか。そういう知恵が問われる時代かと思います。
武田:米中の貿易交渉が行き詰まる一方で、アメリカは日本とも新たな貿易交渉に入っています。トランプ大統領は先週、こんな気になる指示を出しました。「日本などから輸出される自動車は安全保障上の脅威だ」としまして、日本からアメリカへ輸出される自動車の台数を減らすような対策を協議するように求めています。
小柴さんの会社も自動車関連の企業との取り引きをされていると思いますけれども、日米の貿易交渉の行方をどう受け止めていらっしゃいますか?
小柴さん:これは正直言って、新しく出てきたことだし、ポリティカルに言っているような面もあるので、行方を冷静に見守るしかないんじゃないかなという気はします。
武田:トランプ流の強引なやり方の矛先が日本に向くんじゃないかという懸念について、どう考えますか?
吉崎さん:客観情勢で言うと、今はむしろ中国に専念して、日本、ヨーロッパ、カナダ、メキシコはちょっと抑えておこうという感じが見えます。ただ、今回の訪日の時はともかく、中期的、長期的に見て、日米の貿易不均衡は大きいですから、また蒸し返されることはあるだろうなと。それに対して準備をしておく必要があるかなと思います。
武田:アメリカと中国という大きな経済大国同士が対立する中で、日本はどうすればいいと思いますか?
小柴さん:日本はグローバルに市場を求めなければいけないので、その中で、市場における機会と地政学。それから技術の二面性による世界の枠組みの変化を考えながら経営をやっていくんだと思います。


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