「戦勝5カ国の絶対権利」は永久不滅なのか


興味深い議論だが、誰もが既得権にしがみつく。歪みが生じても是正する知恵はない。出来るのは戦争。既得権の枠組みに戻す力のほうが強い。国家という枠組みがなくなるまで。世界一斉蜂起型のテロが起きる日が来るかもしれない。



http://toyokeizai.net/articles/-/61631

「戦勝5カ国の絶対権利」は永久不滅なのか
常任理事国の拒否権に制限が掛かる日

ギャレス・エヴァンス :元オーストラリア外相
2015年02月27日

常任理事国に対する国際的な「圧力」が高まっています(写真:ロイター / アフロ)

フランスは2001年、国連安全保障理事会の常任理事国(米英仏ロ中=P5)は、大量虐殺のような犯罪行為に歯止めを掛ける事案に関しては拒否権の行使を控えるべきだという提案を持ち出した。 国連創設70周年記念を目前にした現在、オランド大統領は、この案を再び積極的に追求し始めている。はたして、実現は可能だろうか。

当然、ロシアと中国が難色を示すのは想像にかたくない。ロシアは旧ソ連時代を合わせて1946年以降、実に100回以上の拒否権行使を行っている。2011年以降は4回の拒否権行使を行い、シリアにおける虐殺行為に歯止めをかけるための決議を妨害している。

拒否権行使が約80回に上る米国も、この件に関しては熱心さを欠いている。フランス案を支持しているのは英国のみである。拒否権を廃止もしくは制限するような、正式な定款変更が実現することはありえないと、誰もが考えている。
安保理の構造は、現実を正しく反映していない

しかし、ここ15年間でP5に対する国際的な圧力は高まっている。2005年総会における「保護する責任」(R2P)原則の全会一致の採択以降、それはより一層顕著になっている。シリア情勢に対する決議の妨害は激しい嫌悪を生み出しており、最新の総計では、68カ国がさまざまな国連フォーラムでフランス案に対する支持を表明していた。

大量虐殺という犯罪行為においては、拒否権を使用するべきではないという激しい倫理的な論争が起きているのだ。P5は、国連憲章ならびに国際人道法の下、国連あるいはその法規の有効性を損なってはならないという義務を負っている。安保理の構造はすでに21世紀の地政学的な現実を正しく反映していないものと見なされており、大量虐殺の状況下における拒否権行使への政治的論争は、すなわち安保理の信用性と正統性を危うくするという論争として、P5に重くのしかかるはずである。



http://toyokeizai.net/articles/-/61631?page=2

「戦勝5カ国の絶対権利」は永久不滅なのか
常任理事国の拒否権に制限が掛かる日

ギャレス・エヴァンス :元オーストラリア外相
2015年02月27日

しかし、すべてのP5が合意できる、拒否権を制限する提案が起草されるためには、3つの重要な要素が必要となる。

まず、その協定案は関連性のある事案を明白に定義し、確立されたR2P用語を基に構築されなくてはならない。「全住民が苦しんでいる犯罪、集団虐殺、人道に対するその他の犯罪、あるいは大規模な戦争犯罪の差し迫った危険性」といった定義づけが考えられるだろう。

次に、このような事案が実際に発生した際、協定案にはそれを判別するための仕組みが必要となる。これは迅速に行い、客観的評価を一定程度保証し、理想的には国際コミュニティの広範な部分にまたがる強力な関与を生み出す必要がある。
悲劇を繰り返さないために

これらのニーズを満たす1つの方法が、2段階の要件認定方式の配置である。1つ目の要件では、国連事務総長、ならびに大量虐殺の防止とR2Pに関する特別顧問室が認定書を安保理へ通達し、その事案が合意された定義を満たしていることを伝える。もう1つの要件は、一般に認められている各地理的区分からの少なくとも5つの加盟国を含む、最低50加盟国による拒否権制限の要求である。

3つ目の重要な要素は、P5のどのメンバーでも、「極めて重要な国益」がかかっている場合には、拒否権を発動できるという例外規定である。

中国とロシアは、それぞれ2007年と2008年、ミャンマーとジンバブエに対する安保理の決議案に拒否権を行使する際、「国益」を持ち出せただろうか。ロシアと、シリアのアサド政権は、政治的にも軍事的にもその関係が深まっているものの、国連の決議案がロシアの重要な国益を損なうなどと、本当に主張できるだろうか。そう考えれば、拒否権発動には相当の抑止が掛かる。

カンボジア、ルワンダ、スレブレニツァやシリアの悲劇を繰り返してはならない。そのために考案された行為を妨害する人々には、今まで以上の政治的損失を与えるのが、拒否権制限の意義である。フランスの提案は、国際的に人々の心に響いている。P5がそれを無視するには、相当な危険が伴うだろう。

(週刊東洋経済2015年2月28日号)

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