ミステリースペシャル「満願」の少し残念なあとがき
- #1:万灯
- #2:夜警
- #3:満願
お盆の頃にNHK総合で放映されていた3回のシリーズもの。録画しておいたものを漸く見ることができた。連続ものかと思ったらそれぞれが独立した作品だった。全部が面白かったけど全部が中途半端とういうかまだ続きがあるでしょうという終わり方。観なくても分かるとかこれで十分とかの人には文字通り満願かな。
万灯(まんとう):
殺した相手がコレラに感染していて殺すときに自分もコレラに感染してしまった。放っておいても死ぬ人をわざわざ殺して自分も死ぬ。馬鹿な話だ。ストーリー展開は時間枠や予算枠もあるが結構乱暴。必然性が伝わる脚本になっていない。演出はさらに下手。原作の面白さ醍醐味がスポイルされている。
ガス油田開発プロジェクトがスムーズに進むから主人公の満願は成就したと言えるか。
これ全然違うでしょう。主人公も死ぬから誰かの満願が成就するんですよ。そこを見せなければこの作品は失敗。原作通りなら原作が失敗している。只の皮肉を扱っただけで終わってしまった。隠されている企みは闇の中。
夜警(やけい):
合法的に銃を撃つことができるから警官になった男が、過失で暴発させた。その隠ぺいのために一計を案じて公然と銃を撃つことができた。自分で犯罪を誘発させて取りまりのために発砲する段取りが、自分自身が返り討ちにあって終わってしまう。
発砲数と薬莢の数の不一致からベテランが隠されたものを推理する形で見えないところをつないでいくストーリーには物証主義の現在では説得力がないもので作品としては物足りなく思うかもしれない。
満願(まんがん):
借金をして返済できない畳屋の奥方が、借金の方に家宝を取られないようにするために、企みを持つ。貸主を殺害して自分は服役し、家宝は殺害の証拠品としてフリーズさせる。その他のガラクタは全部処分して借金話は終わらせる。飲んだくれの亭主の面倒は見ないからやがて命を失う。
学生時代に畳屋に下宿していた主人公が弁護士になって弁護するが、女は服役を望む。10年後、弁護士は証拠品(血痕の模様)を見ていて女の企みを知るが、刑は既に確定し服役も終わった。
飲んだくれ亭主の役作りが物語の展開では重要だが、うだつの上がらない時代遅れ職人気質の乱暴者に見えたものが実は・・・という下りが不十分。全体としてやや一本調子になっていることは、女の本性を暗示させる部分を気迫にしてしまって残念。
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振り返ればNHKらしいまとめ方ともいえる。役者さんに不足はないから、企画制作スタッフに問題がありそうだ。結果、満足度も少し不足するかな。これでは受信料の満額払いは難しい。
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