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半導体開発の「ムーアの法則」は限界か



  • ムーアの法則


  1. 技術革新のある傾向に変化が現れた。集積率が毎年2倍で向上していたものが2倍を下回るようになった。「ムーアの法則」はある時期の傾向を端的に表現したものに過ぎず法則でも何でも無い。広い意味の技術環境の変化に過ぎない現象を取り上げる記事としては詰まらない内容だ。もっとも、ムーアの法則を前提にビジネスを組み立てている人には大事なことだろうが、こんな記事になる前に彼らは普通にビジネス要件の変化として理解しているだろう。
  2. ムーアの法則の脱落は既にどこかで記事にされていることで、わざわざ改めて流す必要はないだろう。



http://jp.wsj.com/articles/SB11581577432647144308704580587363416618820?google_editors_picks=true

半導体開発の「ムーアの法則」は限界か

By DON CLARK
原文(英語)
2015 年 4 月 18 日 14:16 JST

インテルチップの技術を使ったロボットスパイダーをムーア氏(右)に見せるクルザニッチCEO Intel Corp.

 シリコンバレー開拓者の1人で半導体大手インテルの共同創業者のゴードン・ムーア氏が、半導体開発に関する大胆な法則を提唱して今年で50年となる。その法則とは、技術革新が小さなシリコン・チップの上に組み込まれるトランジスタの数を約1年毎に倍増させ、そのチップを使った機械は小型化することにより高性能になるというものだった。

 「ムーアの法則」と命名されたこの定理は、技術関連産業の諸法則の中でも最も長くその有効性を保った概念の一つとなっている。それはパーソナル・コンピューター(PC)、携帯電話、ウェブ・サーバー、ネットワーク接続機器などの革命的製品の出現に道を開いた。そして新世代のチップが開発されるたびに、前世代のものより高性能かつ低価格を実現するのが普通だった。

 しかし、「ムーアの法則」はここに来て限界がみえつつある。

 カリフォルニア州に本拠を置くコンサルティング会社、インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズの試算によると、最新の技術を用いたチップの設計と実用試験は今や1億3200万ドル(約160億円)かかり、前世代の最高性能のチップの設計・試験コストと比べ9%増加した。10年前はそのような先端チップの設計は約1600万ドルしかかからなかった。その一方、一部の会社は各チップのコストを初めて引き下げられなくなっている。

 この変化の一因は、シリコンウエハーを最新のチップに加工していく際に多くの新たな工程が必要になったことだ。最新チップの回路の幅は14ナノメートル(ナノは10億分の1メートル)と極微小となっており、これにより1つのチップの上に過去と比べるとトランジスタを数億個も多く組み込むことが可能になっている。しかし、それほどの数のパーツを組み込んだチップを設計するには多くの時間と経費がかかるようになった。

 半導体各社は、この先10年ほどはさらにシリコンチップを小型化し続けられそうだが、その金銭上の見返りは低下し続けるとしている。一部のチップ設計者は、コストより性能が重要な最先端チップの製造にさえ、最新の技術は制限的にしか使わないようになっている。

 ブロードコム(本社カリフォルニア州アーバイン)の創業者で会長兼技術責任者のヘンリー・サミュエリ氏は「(新技術の使用に)すごく慎重になっている。これらのチップの価格は劇的に上昇しているためだ」と話す。

 マイクロン・テクノロジー(本社アイダホ州ボイジー)のマーク・ダンカン最高経営責任者(CEO)も「改善してペイする市場がどんどん小さくなるだろう」という。同社はスマートフォン(スマホ)やデジタル・カメラ、写真アルバム用のタブレット端末に使われるフラッシュ・メモリー・チップを製造している。

 ムーア氏は元々、シリコンバレー創生期の中核企業だったフェアチャイルド・カメラ・アンド・インスツルメント傘下にあったフェアチャイルド・セミコンダクターで研究開発の責任者だった。そして1965年の4月19日電子技術雑誌に「集積回路により多くのトランジスタを詰め込む」との論文を発表、その中で後年「ムーアの法則」と呼ばれるようになる予測を提唱した。

 その予測では、ムーア氏は1つのチップの上の半導体の数は毎年倍増し、当時の約60から1975年には6万5000にまで増えるだろうとした。ただ、同年には倍増ペースを1年ではなく2年に修正した。


「ムーアの法則」提唱者のゴードン・ムーア氏(1970年代) Intel

 フェアチャイルドは当初、最初のトランジスタを1個150ドルで売っていた。ムーア氏のこの論文発表後、価格は同社製品も競合社のものも年々下落を続けた。

 インテルによると、同社の中核製品である「Core i5」マイクロプロセッサーは13億個のトランジスタが組み込まれ、1つが0.00000014ドル、つまり7万個のトランジスタあたり1ペニー硬貨(=0.01ドル)だ。

 「ムーアの法則」は当初、チップ開発エンジニアの1つの目安的存在だったが、徐々にライバル社との競争上達成しなければならない原則となり、各社に休むことのない技術革新に駆り立てることになった。

 2000年代半ばまでは同法則は、コンピューターの鍵となる性能である情報処理速度(クロック周波数)の加速化に貢献した。しかし、処理速度の高速化は、市場が携行型のコンピューターに移る中で、機器の過剰な消費電力と発熱という問題を生じさせるようになった。

 この問題はインテルや競合チップメーカーに製造の戦略的変換をもたらした。トランジスタの形を変えることにより高速化し、消費電力を抑えるようにしたのだ。

 しかし、製造コストは依然上昇し続けている。新型チップ製造工場の建設費用は100億ドルもかかることさえある。このコスト問題で米IBMは昨年、自社の半導体事業を請け負ってもらうのに15億ドル支払ったほどだ。

「ムーアの法則」通りに開発製造を進められてきた会社でさえ、そのペースを保つのがどんどん難しくなっている。インテルの14ナノメートル技術も、製造欠陥の頻度を減少させるのに時間がかかり、当初予定より半年遅れての導入となった。

 今後「ムーアの法則」が有効性を保ち続けられるのかが注目される。